【映画】ビューティフル・ゲーム

ホームレスを対象に、4対4で対戦するストリートサッカーのワールドカップを扱った作品で、フィクションだと思って見ていたら、エンドロールに「事実を参考にしている」という説明と資料映像が流れていて驚いた。内容的には完全にコメディなのだが、ホームレス問題のみならず、薬物依存や民族対立なども扱われている上に、ダイバーシティ問題に軸を置く骨太なバックグラウンドを持っている。

サッカーを描く部分は無理のある設定も多いが、主人公のヴィニーがロンドンのサッカークラブであるウェストハムの選手だったということや、米国代表が女子のチームで、この大会での活躍によって大学から推薦入学のオファーを得るということは、かなり現実的だと言える。それらを堅苦しく描くのではなく、あくまでコメディ要素の延長として使っているので、気軽に見ようと思えばあっさりと見終えてしまうだろう。

日本チームは高齢者が多く、サッカーも弱いという設定。しかしこれも、日本のホームレスの実情に沿っている。米国では大学進学前の女子もホームレスになり、イングランドでは若い元プロサッカー選手が職を失っていることとは対照的だ。その意味では、日本の福祉行政に課題があるということを示されたようにも受け取った。

また、国の代表として参加しているはずの大会で、欠場者が出た場合に他のチームから助っ人を加えることが許容されるレギュレーションも興味深い。イングランド代表のクルド人が、対戦相手のイタリア代表にトルクメニスタン出身者が含まれることを理由に出場を拒否することと合わせ、「国家などという境界線に、意味はないんだよ」というメッセージにもなっているのではないか。

エンドロールで日本での様子が描かれる際に「ビッグ・イシュー」のロゴが見える。これはホームレスに販売を委託することで彼らの生活支援をするための雑誌を発行するNPO団体だが、「ダイバーシティ・サッカー」もその活動の一環のようだ。このような活動を通じてホームレスの社会参加に貢献するのは、非常に意義のあること。Netflixがこの映画を配信したことも、そこにつながる活動の一環なのだろう。