【ドラマ】ゴッドレス -神の消えた町-

物語の構成がシンプルではない上に、タイムラインを行き来する作りになっているせいで、全容を把握するには苦労する作品。歴史的にニューメキシコ準州が置かれた位置づけや、いわゆる「西部劇」の文脈を理解していれば、視聴する上で大きな助けにはなるだろう。

鉱山を主産業とする街が、その鉱山で起きた事故によって男性の大半を失ってしまう。女性たちは鉱山の買収を目論む一派や悪党たちに苛まれながらも力強く戦い、自らの土地を守ろうとする。

軍隊帰りの男たちを援軍に迎えようとする場面では、「軍隊上がりなら、助けてくれる」というロジックが描かれる。軍隊の保持を憲法で禁じている日本においては、自分たちの故郷や同郷の士を守るという意識も希薄だ。地縁も家族の絆も、おそらくは世界標準を大きく下回っているのではないか。

宗教的な倫理観も薄い日本人ではあるが、僕は比較的正義感が強い方だと思っている。正義感とは、つまり同じ価値観を守ろうとする意識であって、決して絶対的なものではないことに注意が必要だ。異なる宗教や価値観において、「話せばわかる」はずもない。それはつまり、絶対的な神が存在しない「ゴッドレス」な場であるということだ。

俳優陣では、「ダウントン・アビー」でメアリーを演じたミシェル・ドッカリーと「ナース・ジャッキー」のゾーイ役メリット・ウェヴァーにふたりがそれぞれに強い女性を表現する。特に、意志と目力の強さは見応え十分だ。

ドッカリー演じるアリスの義母で先住民のアイオビは、銃の名手であることがじっくり描かれていたので、終盤の戦いで重要な役割を担うことを期待していたのだが、この点については肩透かしだったことが残念だった。