【ドラマ】ザ・ディプロマット

「The Diplomat」はNetflixで木曜日に配信が始まったばかりだが、土曜日までにシーズン全8話を一気見してしまうくらい面白い作品だった。米国駐英大使ケイトを演じるケリ・ラッセルは「ジ・アメリカンズ」さながらに、重ねた齢を味として表現する熟練の演技。その配偶者であるハル役のルーファス・シーウェルは「高い城の男」のジョン・スミスだが、こちらも個性をふんだんに発揮して嫌味だらけのアクの強い人物を好演している。さらには、「シカゴ・メッド」でレイサム先生を演じるアトー・エッサンドーも、台詞のない部分での表情だけで伝わる情報の多さは感動的だ。

新任の大使夫妻という設定ながら、副大統領や国務長官を狙う野望や現政権幹部との確執など、ドロドロした人間関係を描く。本業の大使としての活動も、スパイさながらの情報戦の模様がリアルに描かれる一方、体臭を気にしたり、スーツにつけてしまったヨーグルトを取るのに苦労したりと人間味あふれる描き方で作品の世界観をしっかり構築している。シーズンファイナルでは意表を突く事件が起きたところで終わってしまうので、ここから先の展開も大いに楽しみだ。

ロンドン市内の映像はさほど多くないが、郊外の古城のような邸宅や牧草地の光景、そしていかにも英国紳士然とした使用人や英国外務省関係者の立ち居振る舞いには「ダウントン・アビー」を思わせるような要素が散りばめられており、「アメリカから見たステレオタイプなイギリス」はこういうものなのだろうという思いで見ていた。「エミリー、パリを行く」もそうだが、外国を見る目というものは、その国によって視点に微妙な違いがあることが面白い。特に今の米英関係としては、英国のEU離脱スコットランド独立機運も表現されているので、非常にリアリティがある。