【ドラマ】ハッピー・バレー 復讐の町

イングランド北部の架空の街ハッピーバレーを舞台に、ベテラン女性警官の周囲で起きる事件を描くドラマ。美しい風景の中で、品のない市民たちが等身大の生活をしている様は、J.K.ローリングの小説「カジュアル・ベイカンシー」に描かれていた世界観にも通じる。パブでの乱行や入り乱れる不倫関係など、いかにもという雰囲気の世界観で妙な安心感を覚えてしまうほどだ。日本人はヨーロッパ信仰が強いが、所詮こんなものなのだという感覚だ。

主人公キャサリンとその妹カレンの豪傑っぷりが気持ちよい一方、シーズンごとに登場する「ダメオヤジ」が絶妙なスパイスとなって作品の味わいを増してくれる。シーズン1では娘を拉致監禁される社長の右腕ケヴィン。実は彼がこの事件を仕組んでいるのだが、最初はちょっとした仕返しのつもりが、徐々に大事になってしまってうろたえる描写が笑いを誘う。シーズン2では、不倫の果てに殺人を犯してしまう捜査官ジョンが、捜査の進展に一喜一憂する。こちらは演じているのが「ダウントン・アビー」でモールズリーを演じたケヴィン・ドイルで、実直そうな印象ながら道を踏み外した者の悲哀をうまく表現している。

シーズン1で拉致監禁されてしまうアンがシーズン2で警察に就職し、演じるチャーリー・マーフィーがシーズン1とは一味違う演技を見せてくれるところも必見。そして悪役トミー・リーの婚約者役でシーズン2に登場するシャーリー・ヘンダーソンは、「ハリー・ポッターと秘密の部屋」の「嘆きのマートル」だ。あの声質と呼吸の際に声が漏れるところは、いかにもマートル。シーズン2に新たな要素を加えてくれている。