【ドラマ】BLACKOUT―ヨーロッパ大停電―

テーマが興味深く、舞台がヨーロッパということで見始めたドイツ製作によるドラマ「BAACKOUT―ヨーロッパ大停電―」。着想と展開の面白さは認めつつも、アイデア倒れというか作り込みの甘さで非現実的な部分が露呈してしまったことで、せっかくの着想が活きなかった。

欧州各国が軒並み停電に陥るということだが、現実的に送電網も発電方式も異なる上に太陽光発電も相当に広がっている現代において、ここまで一律に停電する状況はあり得ない。ソフトウェアを仕込んで異常を偽装するという手法も、営利企業がいつまでも気づかないとも考えにくく、もうひとひねり工夫が欲しかった。「電力がないとポンプが動かず給油ができない」といったリアルな設定もあっただけに、もったいない。

この感覚は、僕にとっては島田荘司の「帝都衛星軌道」を読んだときに感じた、「着想に溺れて、調査も十分でないまま書き上げた現実感のない物語」に近い感覚なのだ。科学的あるいは地理的な考証ができていれば、もう少し現実味があって恐怖感の鱒物語に仕立てることができたのではないか。

俳優陣が地味で、日本ドラマにも多いステレオタイプなイメージの役人や政治家になってしまったことも事実。特に中心人物である内務省職員フラウケを演じたマリー・ロイエンベルガーは華がなく、役人らしさを優先しての起用に見え、親子と元夫婦を巡るヒューマンな要素が描き切れていなかった。

最後の最後に、今後の展開を匂わせる展開を盛り込んでいたが、これはシーズン2を想定しているのだろうか。「ミニシリーズ」という扱いの作品でこういう終わり方をするケースが、最近目につく。