【ドラマ】キング・オブ・メディア

「キング・オブ・メディア」はルパード・マードックを思わせるファミリーが経営する企業を巡る物語だが、原題は"Succession"なので後継争いという部分に焦点が当てられている。コナー、ケンダル、ローマン、シヴの4人がローガン・ロイの築いたウェイスター・ロイコの権力ゲームというか、椅子取りゲームに身を費やす。第1話を見たときの印象は「誰にも感情移入できない」と「ケンダルの挙動不審が、どう展開するのか」のふたつだった。

そして、今日シーズン1を見終わって、あらためてケンダルを演じたジェレミー・ストロングの演技力に感服した。ネタバレにならないような書き方になるが、父ローガンに楯突いたケンダルがその策略の中で揺れる心情や、最終話で思わぬ出来事に巻き込まれた際のピュアな表情は、これが演技だと思うと恐ろしくなるくらいだ。だからといって感情移入はできないキャラクターなのだが、シーズン2以降も彼の動静が気になってしまう。

その最終話の出来事に至るストーリー展開は素晴らしく、実際のビジネスの世界でもありそうな設定に政治が絡んで、ちょっと異次元で非現実的なテイストになっている。ドラマには、そのくらいの「リアリティのなさ」は必要だが、それを撮るにはそれなりの予算がかかる。だからこそ日本ではなかなかできず、どうしても演劇的な虚構の世界に逃避してしまいがちなのだ。