【ドラマ】ケタリング・インシデント~森に消えた少女~

「ケタリング・インシデント」はタスマニアを舞台に展開するドラマで、ホラーやSFの要素を加えた全8話のクライム・サスペンス。ロンドン在住の医師が、突然故郷のタスマニアで目覚めるところから物語が始まり、過去の少女の失踪と現在の事件とがクロスオーバーしながら謎を深めてゆく。コケ、蛾、血液といった科学的な要素で色付けされるのだが、残念ながら十分な回収ができないまま終わってしまった印象がある。

タスマニアの圧倒的な自然をベースに加工された風景は壮大で圧巻なのだが、二重の月や遠隔移動のような非現実的な要素に対してはあまり説明もない。科学的要素の現実感に対して、ファンタジー的な雰囲気に仕立てる効果はあるのだが、舞台装置として以上には位置付けられていないようで、消化不良感だけが残ってしまった。緊迫感のある展開とデビッキの演技力で見せてはくれるので、作品自体を楽しめないことはないのだが、クエスチョンマークを払拭できないのは残念だ。

主演のエリザベス・デビッキの独特な存在感と演技力には、十分な見応えがある。攻撃的にグイグイ押す医師の姿と、やつれてゆく病人の姿を演じ分けるあたりは本当に見事。もうすぐ「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の新作も配信が始まりそうなので、アイーシャとしての演技にも期待が高まる。作品の色と役柄としてはまったく異なるので、そこがかえって面白い。