【ドラマ】ザ・クラウン シーズン5~6

ダイアナ元妃の死亡事故を挟んで前後編に分割されたシーズン6を含め、全体的にそれなりに情報を持っている事項を整理しながら進む展開。シーズン1から英国現代史を辿るストーリーではあるが、登場人物は徐々にキャラが立ってきているので、その心理描写にも磨きがかかる。

僕が興味を持っていたのは、どんな形で最後のエピソードを終えるのかということ。現実世界においてはエリザベス女王の死去とチャールズ国王の戴冠式というエポックを経験してしまっているのだが、そこまで描くには時間も足りないので、何らかの仕掛けが必要なはずだと思っていた。

その観点からは物足りなさが残る。個々のエピソードで描かれる英国近現代史の掘り下げが十分に深かった分だけ、終わり方のあっけなさは目立つ。このストーリーを構想する中では、エンディングについて十分な考察はできていなかったのではないか。実際、シーズンごとのゴールはありながらも最終シーズンのオチを想定せずに進める作品も多いが、エリザベス女王薨去と王位継承が不透明な中でのスタートだったことを考えれば、本作も同様だった可能性は高い。

女王の葬儀や戴冠式は記憶にも新しく、多くのメディアのアーカイブにも残っている現状では、ドラマの中で取り上げる価値は高くない。だからこそ、どう終わらせるかは難しい問題であり、納得感が高まらない中で年内配信に向けた決着だったのではないか。

ハリー王子のメーガン・マークルを巡る問題は完全にスルーされ、ウィリアム王子の結婚にも重点はおかれなかった。それはつまり、この物語の主人公はエリザベス女王であり、チャールズへの王位継承がテーマだったということ。そこから先の世代への継承は、あくまで添え物でしかなかったということだ。