【ドラマ】ザ・クラウン シーズン3~4

オリヴィア・コールマンエリザベス女王を演じる「ザ・クラウン」の中盤では、さながらイギリス現代史のような展開に。フォークランド紛争サッチャー政権の誕生は僕の記憶にもある出来事だが、アバーファン炭鉱の崩落事故は覚えていなかった事件でビジュアル的にもかなり緻密に作り込まれていて迫力を感じた。

しかし、何よりも重要な出来事はチャールズ皇太子とダイアナ嬢の出会いと結婚だろう。衝撃邸な事故はこの後に描かれるので、序章のような位置づけではある。だが、背後にある「王室としてあるべき行動」を果たすために自らの意志を曲げる意思決定をしなければならないということについては、これまでにマーガレット王女をはじめとする一族が通ってきた道。シーズン1~2に登場したエドワード8世に至っては、我を通したいがために王位を棄てる決断までしている。

企業における社長もそうだが、周囲が求める姿を演じることも給料のうち。人は権力を持っていることは羨ましがっても、自分の素を出せない苦悩とプレッシャーには思いが及ばないもの。その意味では、本作が描こうとしているのは、まさにこの「王室の権力と背中合わせにある対価」なのだろう。

ダイアナを演じるエマ・コリンは、表情や動作をダイアナ本人に似せることに苦心しながらも、巧妙に彼女の心の綾を描き出す。この後のシーズンで、エリザベス・デビッキにどうつなげるかも見どころのひとつだ。