【ドラマ】クイーン・シャーロット ~ブリジャートン家外伝~

「ブリジャートン家」の登場人物は出てくるし、それなりにコメディ要素もないわけではないのだが、この「クイーン・シャーロット」はかなり骨太な内容だ。英国王ジョージ3世は、実際にもこころの病に悩まされた人物のようだが、王を継ぐものとして生を受けた宿命が明確に描かれる。先日、実際に行われたチャールズ3世の戴冠式でも感じたことだが、王は好き勝手に何でもできるわけではない。国民や議会、教会、軍などからそれぞれに期待を受けるし、そこで統率力、つまりビジョンとリーダーシップを示せなければ、人心の掌握ができないのだ。

それは、現実の社会でも同じこと。大統領や首相は思いのままに行動できるわけではないし、企業においても社長がワンマンでいられるのは公開企業ではほぼ不可能だろう。ステークホルダーの顔色を窺いながら、納得感のあるメッセージを発信する。そのストレスフルな業務に対して、高い報酬が支払われるということだ。ただし、大統領や社長は辞任することができるのに対して、国王はそれができない。だからこそ、王位継承者として生まれてくることは、本人には選択肢のない究極の「親ガチャ」ということになる。

「ブリジャートン家」ではコミカルな端役という印象のシャーロット王妃は、若いころの姿も含め存在感が一気に増している。そして、謎の存在だったレディ・ダンベリーが地位を築き上げた経緯やヴァイオレット・ブリジャートンとの関係も描かれ、サイドストーリーとしては練り込まれた作りになっている。そのせいか1話が長く、最終エピソードは90分近くにも及ぶが、これは「令嬢アンナの真実」同様に、最近のションダ・ライムズの傾向と言ってもよさそうだ。