【King Gnu】The Greatest Unknown

最初に聴いたときの印象は、キャッチーな売れ筋ではなく井口理のボーカルを前面に押し出した作品を並べたというものだった。直前に読んだ彼のインタビュー記事に、音が跳躍する「白日」は、「難しいので、歌えた感触は一度もない。できれば歌いたくない」という発言があったが、同じように音が跳んで歌いにくい楽曲で井口のテクニックと魅力を見せつけている構成のように感じたということだ。

しかし、何度も聴き込んでゆくうちに、その印象がかなり変化した。キャッチーなメロディではないものの、耳に残るリフがとても魅力的なのだ。それはボーカルだけでなく、ギターやベースなども含んでのこと。このコード進行、この度数の動きという計算された中で繰り出される短いフレースに、彼らのサブリミナルのような狙いすら感じられる。その意味では、ライブの演奏で盛り上がるというよりも、スタジオ版をじっくり聴き込むことが前提の楽曲なのではないだろうか。それはまた、後期のビートルズにもつながる手法で、音楽性の追求という観点では彼らは後継者なのかもしれない。

「泡」もシングルとして聴いた表面的な印象から変化し、この流れの中の13曲目という終盤に聴くことでより深い味わいを感じることができた。それだけ、アルバムとしての完成度が高いということであり、だからこぞ前作「CEREMONY」のリリースから3年を要することになったのだろう。