【フィギュアスケート】NHK杯

昨シーズンの世界選手権と比べると、NHK杯はどうしても演技内容も顔ぶれも「格落ち」感が否めない。もっと言えば、グランプリシリーズ自体が各国選手権前の練習試合のようにも思えてしまう。それは、トップ選手が6大会のうち2大会のみに出場するというフォーマットにも起因するが、シーズンの最終ゴールが世界選手権だとすると、各国の選手権がそのマイルストーンであって、その前のグランプリシリーズはネーベルホルン杯フィンランディア杯と同様に「そのシーズンのプログラムを試す場」なのではないかと感じてしまうのだ。

ペアはハーゼ/ボロディン組がダントツで他の組はボロボロ。女子シングルはジーグラーがSP5位から逆転してしまったが、これは他の上位陣がFSで得点を伸ばせなかったからに他ならない。アイスダンスも逆転があったが、こちらはフィアー/ギブソンの演技を褒めるしかない。ロッキーメドレーとボクシングをフィーチャーした演技構成は、正直「いまさら感」とエキシビションのような色物感が拭えなかったが、あれだけの完成度で観客も引き込んでしまったことを考えれば、逆転優勝は当然だった。

とにかく全体的な出来が悪い中で迎えた男子シングルも、第2グループの前半3人までは似たような内容と展開。ブリッチギーの演技によってようやくホッとするような雰囲気が漂ったところで、宇野昌磨と鍵山優真が登場した。宇野の安定した4回転の連発の後に鍵山が3Aを失敗したところで、宇野の逆転優勝という感触があったのだが、結果的には宇野の4回転に軒並み回転不足の「q」がついていた影響で、鍵山が逃げ切ることとなった。

宇野本人のコメントを含めジャッジへの批判も散見される状況だが、この大会の全体的なレベルの低さを考えたときに、ジャッジの目線が無意識に変化していた可能性も否定できないように思う。それくらい、この大会のレベルは低かった。その意味では、批判すべきはグランプリシリーズという大会のフォーマットそれ自体であって、ジャッジや各国のスケート協会ではない。フィギュアスケート界の利益確保も必要なことではあるが、再考する余地は十分にありそうだ。