【北京オリンピック】フィギュア男子シングルSP

羽生結弦が、まさかのミスで8位スタートとなった男子シングル。ショートプログラムでは3つのジャンプが規定通りでないとゼロになってしまうので、差がつきやすいという怖さがある。単独ジャンプは3回転以上が必要なので、1回転になってしまったサルコウではポイントが入らないのだ。他の選手のエッジの跡にブレードが入ってしまったようで、自動車で言えば「轍」にハマったようなもの。サルコウは両足を引くようにして跳ぶので、そのリスクは結果的に大きかったのだろう。

ただ、それ以上に違和感を覚えたのは羽生の表情。高得点を出すときの彼は、何かが憑依しているかのように鬼気迫る雰囲気を醸し出すものだ。ところが、今回の羽生の表情にはそんな凄みはなく、どちらかというと不安すら感じられるようなもので、「どうしたんだろう」と感じざるを得なかった。逆に憑き物にとりつかれたような演技だったのは、団体アイスダンスのマディソン・チョック。メイクも迫力があったが、別人格の宇宙人になり切ったような演技だった。あれが、本来なら羽生の姿なのだ。

ただ、これでフリーはメダルではなく自身のポイントだけを追えばよくなった。ということは、羽生が挑戦を心待ちにしている4回転アクセルにも挑みやすくなったのではないだろうか。おそらくメダルはネイサン、鍵山、宇野で色を争うことになるはず。羽生はそれを超越して、自ら設定した高みを目指して欲しい。