【Netflix】スパイ・オペレーション:諜報工作の舞台裏

スパイを扱ったドキュメンタリーでCIAはもちろん、モサドなどの諜報機関も登場する。モサドの悪行はすさまじく見えるが、これは製作が米国だから米国の機関を正義と見えるような無意識の作りになっているのかもしれない。いずれにしても。登場する人物、特に白人の顔には「人の悪さ」が滲み出ている。

9.11からビン・ラディンを追うエピソードよりも、もう少しマイナーな事件の方が面白い。アゾレス諸島プロジェクトで沈没した旧ソ連の潜水艦を回収するエピソードでは、軍艦の回収行為が国際法違反であることを前提に、ハワード・ヒューズ社を隠れ蓑にして進行する。同社はプライベート企業なので、架空の深海採掘事業を公表しても株価に影響する懸念がなかったということで、政治と経済のリンクを相当に意識している部分が興味深い。

また、直近の懸念でもあるパレスチナ問題は、ミュンヘンオリンピックでの「黒い九月」によるテロ事件が扱われる。事件そのものは知っていたが、ドイツ当局の対応がここまでずさんだった事実に驚愕する。考えてみれば日本関連でも、「よど号軍事件」で犯人グループの指定した北朝鮮ではなく金浦空港に飛行機を下ろすという偽装を行ったバレているので、そんなものなのだろう。

ただ、全般的にこちらが期待する「スパイ」らしさは、あまり感じられない。視聴者が見たい諜報活動ではなく、ドラマなどで取り上げられない裏の部分を意識的に描いた印象で、興味があれば面白いだろうが前提を知らないとついていけなくなってしまいそうだ。