【ドラマ】ジ・アメリカンズ

全75話という大作だが、冷戦時代のソ連のスパイがどのように活動していたのかを描いていて、実に面白かった。演じる役者自身が実際に夫婦である一方、作品の中ではスパイ活動のための仮面夫婦的な位置づけなのだが、それを巧みに演じたケリ・ラッセルとマシュー・リースの魅力が存分に味わえる。ケリ・ラッセル演じるエリザベスの冷徹さは「殺しましょ!」という台詞に端的に表れているが、表情との同期が絶妙なのだ。

特に最終エピソードは、そこに至るまでの伏線が一気に回収され、見応え十分だった。向かいに住むFBI捜査官スタン・ビーマンとの駐車場での対峙は、スタンがどのような選択を下すのか息を呑んで見守るしかないし、最後の最後に娘ペイジが無言で列車を降りるシーンも役者の演技力と場面設定、撮影などすべてが組み合わされた傑作だと言ってよい。ペイジやヘンリーのその後、あるいはソ連に渡らされたマーサについては、スピンオフも想定していたのではないかと思う。それくらい設定が綿密で、ついつい興味をそそられる。

ペイジ役のホリー・テイラーは、ちょうどスーパードラマTVで放送中の「マニフェスト」にも出演している。本作でも複雑な宿命を背負った不幸な少女だったように、こちらでも孤独かつ奇矯な言動で主人公たちに疎まれるという難しい役柄。もっと普通にハッピーな役も演じさせてあげたいと思ってしまうほど、ペイジの幻影がつきまとっているような気がする。