【木下Gジャパンオープン】車いす女子シングルス決勝 上地結衣―田中愛美

木下グループジャパンオープン車いす女子シングルス決勝は、トップシードの上地結衣に田中愛美が挑む対戦となった。当初はモンジャニの出場が伝えられていながら、結局日本人選手だけの大会になってしまったことは残念だが、スタンドではかなりのテニスファンが観戦しており、競技としての車いすテニスを楽しむ文化は徐々に広がってきていることが感じられた。

数年前まで女子の車いすテニスは、ミスをしない選手が勝つ印象で、だからこそ上地の強さが際立っていたのだが、最近は攻めるテニスの重要性が増している印象だ。以前から山なりのラリーが続き、見ていて中だるみする時間帯も多かったのだが、今大会でも攻めてウィナーを狙う場面が多く、時間もかなり短縮してきている。ランキング1位のディーデ・デ・フロートはまさに攻めるテニスを実践しているので、上地が女王の座を奪還するにはこのシフトチェンジが重要だ。

さて、決勝では上地が強さをあらためて見せつける。田中は結局、自身のサービスゲームを1つしかキープすることができず、2つのブレークを含めて3ゲームしか取れなかった。車いすで、しかも女子の場合は特に、必ずしもサーバー有利ということはない。上地もサーブは苦手で、最近は斜めに振り抜くスタイルで攻撃の度合を強めている。だからこそキープが大切で、それこそが勝負を決めるポイントなのだ。田中はコースやプレースメントを狙うセンスは素晴らしいが、残念ながらテクニックが追いついていない。これからの成長に期待したいところだ。

表彰式では、田中が万感きわまったスピーチで、これだけの観客の前でプレーしたことの喜びを伝える。直後の上地は話し難そうだったが、USオープンと同じくらいの声援があったということで、田中のスピーチを上書きしていた。ITC靭テニスセンターは、すっかり立派なスタジアムになっていて、この舞台を彩るには最適だったように思う。有明コロシアムでの男子の大会も楽しみだ。