【BJKカップ】日本―ウクライナ Day-2

ビリージーンキングカップ2日目の見どころは、日本がウクライナに勝つかどうかではなく、内島萌夏がこの大会で成長するきっかけを何かつかんだかどうかだった。シングルス第1試合でコスチュクに挑んだ内島は、しかしファーストセットをベーグルで落とすと、セカンドセットもブレークダウンとなる苦しい展開。相変わらずファーストサーブが入らず、セカンドを入れにいったところを狙われてリターンエースを奪われる。スピードもない上に、回転を掛けてコースを狙うこともできない印象で、あれでよく今のランキングまで上がったものだとすら感じていた。

何とかダブルベーグルだけは避けて欲しいと願いながら観戦していると、ようやく第4ゲームをキープ。ここから3つのサービスゲームをキープできたのは、内島の気持ちの中で何か吹っ切れるものがあったのだろう。ファーストサーブがよいところに入るようになり、体重を乗せた攻めるショットも見られるようになっていた。もう少し早いタイミングで切り替えができていればとも思うし、ファーストセットもセカンドセットも最初のリターンゲームでは競った展開になっていただけに、ほんのちょっとしたことで結果は変わっていたのだと思う。

結果的に完敗した内島だったが、彼女がこの試合の終盤で変化することができたことは、今後に大きな意味を持つだろう。このことは、また後で触れる情報とも関係がある。

内島の敗戦でウクライナの勝ち抜けが決まってしまったため、シングルス第2試合はキャンセルされ、ダブルスがデッドラバーとして繰り上がる。僕としては、このダブルスが目当てだったので、見ることができてありがたい。目の前で青山修子と柴原瑛菜がプレーしているだけでワクワクするのに、その二人が絶好調でスーパープレーを立て続けに見せてくれるのだから本当に興奮した。

特に青山の動きが切れていて、前衛で躍動する。「えい!」という掛け声を響かせながら、ボールに飛び込んでポーチを決める。届くか届かないかのボールへのポーチをネット際にほぼ垂直に叩き込むプレーには、感動すら覚えた。柴原も豪快なサーブを叩き込む一方、反応の良さと即座の判断で的確なプレーを見せてくれた。コンビネーションの良さも見事で、青山の"you! "というパートナーに委ねる合図の声もよく聞こえていた。来年のAOではペアを組む約束をしているとのことなので、今から楽しみだ。

試合後には、勝利を祝うウクライナチームの傍らで、今大会に帯同してサポートしていた奈良くるみの引退セレモニーが行われた。土居美咲から花束が贈られ、土居に続く奈良のスピーチではサポートに加わったことで気づいたことや退任する土橋キャプテンへの感謝が語られる中で、内島に向けた「萌夏、今日は悔しかったと思うけど、ここから成長していけるはずだから」というコメントが印象的だった。内島は涙を拭いながらも、大きくうなずいていた。

そして、最後にNPO団体からウクライナテニス協会への寄付が贈呈された。ウクライナテニス協会の練習拠点はブチャにあり、ロシアによる侵攻被害の大きかったところだ。その復興の一助にという趣旨だったが、今大会ではチケット1枚につき500円がウクライナに寄付され、また避難民を含む在住ウクライナ人を観戦に招待したそうだ。ウクライナチームからは日本語で感謝が伝えられ、温かい雰囲気が有明コロシアムを包んでいた。