【ウィンブルドン】国枝慎吾―ヒュウェット

壮絶な試合だった。ラインぎりぎりを突くショットがことごとく入っていたヒュウェットが勝つだろうと、途中まではそう思っていた。雄叫びを上げ、地元英国のファンを煽るヒュウェットの姿には、この大会に賭ける、いや今日のこの試合に賭ける彼の思いがにじみ出ていた。しかし、国枝も粘る。セカンドセットではサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップを2度凌いで、逆転でセットオールに追いつくと、ファイナルセットも2ブレイクダウンを追いついてマッチタイブレークに。ここでも先行されたものの、いつのまにかひっくり返していた。

この日の国枝はサービスゲームに苦しみ、キープがほとんどできなかった。もともと車いすテニスは、サーブ側がそれほど有利なわけではないのだが、ヒュウェットが明らかにリターンを狙っており、その動きにも幻惑されていたようだ。何とか工夫して回転を変えたりタイミングをずらしたりして、少しずつ相手の綻びを見つけ出した国枝のテニスは、さすがとしか言い様がない。

国枝のサーブは決まらず、ヒュウェットのショットは絶妙のプレースメント。それでも勝ってしまう国枝の強さに、ヒュウェットは茫然としていた。そしてそれは、デ・フロートの壁を破れない上地の思いに通じるのだと思う。(車いすでない)男子シングルスの勝者も同様に憎らしいほどの強さだが、ファンに愛されるかどうかは人柄によるのだろう。国枝が勝利を決めた後は、英国のファンも素晴らしい試合を展開した二人に惜しみない拍手を贈っていた。国枝慎吾、生涯ゴールデンスラムおめでとう!