【エド・シーラン】The Sum of It All

Disney+で配信されているエド・シーランのドキュメンタリーは、タイトルの表記としては"+The×Sum÷of=It-ALL"とアルバムのタイトルに掛けている。もっと音楽中心かと期待して見たが、実際は人間関係にフォーカスした内容だった。エピソード1は、がん宣告を受けた妻チェリー・シーボーンに対する思いが語られ、娘も含めた家族の物語が綴られる。そしてエピソード2では、朋友であり音楽活動においてもつながりの深かったジャマール・エドワーズの死去がベースとなり、それは最終エピソードまで引きずられる。つまり、このドキュメンタリーは、チェリーとジャマールというエドにとって大切な2人との関係を語る内容なのだ。

これを見ていると、エドが音楽的に器用なことがわかる。ラップにしてもアコースティックな曲にしても、無理をしなくても発想が湧き、うまく作り上げてしまう。そのセンスは先天的でもあり、音楽に対する真摯な姿勢も作用しているはずだ。それは言い方を変えると「思いを形にするのがうまい」ということで、作曲も発言も狙っている感じが強いことは否めない。この視点からは、このドキュメンタリーの制作においてチェリーの闘病とジャマールの死にフォーカスを当てたことも、狙った上でのディレクションなのだろう。もちろん、エド本人の意向がどこまで反映されたかはわからないが、アーティストとしてやりたくないものを作るとは思えない。

結果的に、このドキュメンタリーでファンの裾野を広げるというよりは、ファンに対して自身をより深く理解してもらう効果がもたらされたことだろう。個人的にはジョン・レノンオノ・ヨーコのような雰囲気を感じてしまったことで、ちょっと遠ざかることになりそうだ。