【ドラマ】ラフ・ダイヤモンド

アントワープを舞台としたダイヤモンド業界の裏側を描くNetflixのオリジナルで、オランダ語をベースに英語、フランス語、ヘブライ語が場面に応じて使われるインターナショナルなドラマ。ただ、主人公のノアはいかにもベルギー人という印象で、気性が荒く我が強い人物に描かれているので、感情移入はしにくい。他のキャラクターもクセの強い面々なので、誰の視点で物語を追えばよいか悩ましく、作品に入り込めないネガティブな要素になっている。

一方、この作品の背景となる歴史的な経緯は、十分に興味深い。アントワープは15世紀からダイヤモンド研磨において重要な都市になっていたが、ユダヤ人コミュニティの存在も大きかったようだ。本作でもユダヤ教徒の日常や裏のコネクションが描かれるが、それが非常にストレートな描写なので、ある意味ユダヤ人コミュニティをディスる作品なのではないかという気にもさせられる。

また、ベルギーはかつてアフリカ大陸にベルギー領コンゴという植民地を保有しており、ダイヤモンドが産出された。現在のコンゴ民共和国の唯一の外港であるマタディから積み出されたダイヤモンド原石は、ヨーロッパでも有数の貿易港であるアントワープに運び込まれたのだろう。ちなみに民族問題が今も根強く残るルワンダは、第一次世界大戦でベルギーがドイツから奪った国で、ベルギーの統治政策がのちのルワンダ大虐殺の要因にもなっている。そのあたりを意識しながら見ると、この作品で描かれる街や業界の位置づけがより理解できるのではないだろうか。