【ドラマ】令嬢アンナの真実

原題は"Inventing Anna"で、日本人の感覚では「Invent = 発明」だが、ここでは「(ないものを)作り出す」つまり「でっちあげる」という意味。本人が自覚しているかどうかはさておき、詐欺行為を及ぶ上で経歴から口座までをでっちあげたアンナ・デルヴェイの物語だ。主人公はアンナともいえるし、ジャーナリストとしてこの事件を追ったヴィヴィアンともいえる。

アンナを演じたジュリア:ガーナーは、「オザークへようこそ」でも正義感がありながら悪事に手を染めるルースを演じていたが、本作では一層磨きがかかって、見ている者の気持ちを攪拌するような演技が秀逸だ。そしてヴィヴィアン役のアンナ・クラムスキーも、主産を控えながらも原稿をまとめる執念を表現し、出産シーンでも迫真の演技で緊張感を高める。このふたりの演技だけで、お腹がいっぱいになってしまうような作品に仕上がっている。

詐欺を実行したアンナが裁かれるのは当然なのだが、被害者の側も何らかの下心があってすり寄って行った経緯があからさまに描かれる。詐欺に引っかかるということは、当然何かを求めて金銭を出したりするわけで、その意味ではどっちもどっちという感情が湧くような展開。詐欺の被害者にならないためには欲をかかないことが一番だということを、あらためて教えてもらったような気がした。

それにしても、自分ででっちあげた世界に酔ってしまうと、抜け出せなくなる。自分のついた嘘に、自分もその気にさせられてしまうのだ。自分の周りにも、大なり小なりそんな人物は存在する。自分がそうならないように、自らを顧みることは欠かせない。