【ドラマ】ファーゴ シーズン1

悪事を働くということは、どういうことなのか。恐らく、人によって捉え方も異なるだろうし、同じ人格の中でも時間の経過とともに変化するはず。本作は、そんな微妙な心の綾を描きながらも、派手な仕掛けと思い切りのよい大胆な展開でビジュアルに紡ぎ出しているスケールの大きい作品だ。

雰囲気的には「ブレイキング・バッド」のアウトローな世界観と「オザークへようこそ」のような田舎町で暗躍する小悪党の様子が組み合わされたような環境だが、これは米国の地方都市にありがちなのだろうか。耳慣れない地名がかえって新鮮に響き、ニューヨークやLAとは違うアメリカの実態が感じられる。

最大の特徴は、とにかく豪華なキャスティング。マーティン・フリーマンの徐々に自分に自信を持ってゆく演技も捨てがたいが、「弁護士ビリー・マクブライド」のビリー・ボブ・ソーントンが感情を抑えて淡々と殺人を犯す演技も見事。さらには「ブレイキング・バッド」でホワイト先生役だったボブ・オデンカークに「グレイズ・アナトミー」でアディソンを演じたケイト・ウォルシュ、そして「マダム・セクレタリー」でダルトン大統領役のキース・キャラダインと、贅沢すぎる俳優陣が脇を固める。

一番驚いたのは、監督として「NOPE」を撮ったジョーダン・ピールがコメディアンとしての自らの相方でもあるキーガン・マイケル・キーとコンビを組んで、使えないFBI捜査官を怪演したこと。演技としての見せ場もほとんどなく、賑やかしのような位置づけで、とても脚本でオスカーを獲得し、監督としても活躍している人物とは思えない粗雑な扱いなのだ。