【全豪オープン】シンネル―ダニエル太郎

KIAアリーナの観客は、この試合を十二分に楽しんだことだろう。ダニエル太郎が、ここまでシンネルを苦しめるとは思っていなかっただろうし、それも単に相手のミスを待つ守備的な内容ではなく、攻めて抜いて落としての競り合いだ。両陣営ともに、表情をこわばらせて見守るしかなかったように見えた。

ただ、スタンドの盛り上がりは、テニスの大会にしてはやや品を欠くもの。指笛やブーイングだかシウーだかわからない声は、それでも好意的な反応には感じられた。シンネルもダニエルも、ボールパーソンにボールを返そうとしていたし、一部メディアが伝えているようにシンネルがダニエルのミスショットがボールの不備によるものだとチェアアンパイアに申告するという好プレーもあった。こういったやり取りはすべて、見ていて気持ちがよいもの。シンネルの好感度も、一気に上昇した。

セットオールからのサードセットも競り合っていたが、このあたりからダニエルに見える疲労度が一気に高まってしまう。予選から6試合目なので致し方ないところではあるが、それはシンネルにも見えていただろうし、ここからもう一度ギアチェンジするだけの余力は残っていなかった。サードセットの中で流れを変えることができれば、シンネルに勝つチャンスはあっただろう。2015年に慶應チャレンジャーで添田との決勝を観戦してから6年。29歳、まだまだ進化しているダニエル太郎のこれからに期待しよう。