【ローランギャロス】ダニエル太郎―バレール

地元選手が相手だけに、やりづらかったことは間違いない。「ラ・マルセイエーズ」の大合唱まで湧き起ったスタンドは、明らかにバレールの応援一色だった。「グレゴワール!」のコールや「ラーラララララララ、アレ、グレゴワール」といったチャントが、ポイントの合間には切れることなく聞こえていた。天候も、ときおり雨が落ちる状況とあっては、2-1と1セットアップになっても、容易に勝ち切れる状況ではなかった。

序盤のダニエルは、いきなりブレークを許しながら、すぐに巻き返す。サーブが狙い通りに決まり、ドロップショットが冴える。流れをつかんだかに見えたが、バレールが自分のスタイルを押し通しはじめると、その流れは一気に傾いた。そこからは、バレールの気分しだいで勢いが移り、サードセットはベーグルで取ったダニエルだったが、その後はよいプレーが減ってしまった。サーブは時折決まるものの、セカンドサーブを狙われてリターンを決められ、ドロップショットは空転する。バレールはネットプレーが当たりはじめ、サービスゲームでは「3球目」を狙う組み立てがハマった。

気になるのは、ダニエルは本来クレーコートが得意で、ラリーに持ち込んで長いゲームを取り切るスタイルだったということ。自身のスタイルに持ち込みながら、要所で自分のプレーができない。集中力なのかスタミナなのか、明らかにダニエルのプレーの精度は落ちて行った。前に出る部分やサーブでポイントを稼ぐようになった反面、全豪でも見られたように長い試合を戦えなくなっているのだとしたら、ゲームプランをしっかり見つめ直す必要がありそうだ。

ちなみに、「ラーラララララララ、アレ、グレゴワール」は、大分トリニータサポーターの僕にとっては「バーモバモダニエル、バーモダニエル」というかつて在籍してすでに他界した名選手ダニエルのチャントなので、太郎ちゃんの応援に聞こえていたのだった。