【近藤康太郎】三行で撃つ

「三行で撃つ〈善く、生きる〉ための文章塾」は、朝日新聞で名物記者と呼ばれる近藤康太郎の著作。文章を書く者の心得といえる内容で、書くことにそれなりにこだわりを持っている僕にとっては刺さる内容が多く、これからのバイブルになりそうな本だった。

(ここから引用)
歌や、踊りや、ものがたりが、〈表現〉が、この世に絶えたことは、人類創世以来、一度もない。それは人間が、表現を必要とする生物だから。雪の朝の冷気のような、清潔で柔らかな、明るさというより深みのある、気持ちが開けるような、生きる空間が広がるような、そんな「おもしろさ」が、人間にはどうしても必要だったからだ。
(ここまで)

この部分は事業としてのエンタテインメントにも通じる。震災やコロナ禍でも、いわゆる「生活必需品」には括られないゲームの類いがユーザーに求められ続けてきたとこからも、著者の思いには疑いなく同意できる。

著者の掲げる「常套句は使わない」ことや「オノマトペも使わない」ことは、僕もまた心がけていること。読ませるためには、文章にグルーヴ感が必要」という主張も、一度書いた文章を音読して流れを確認する僕の流儀に通じるものがある。「ナラティブ」や「パロール」という考え方も参考になるので、企画書やニュースリリース、シナリオも含めて「書く」ことに関わる人にはおすすめしたい書籍だ。

実は著者は大学の同級生で、ゼミで一緒だった人物。もともと一匹狼集団のゼミだった上に、僕たちの代を最後に先生が大学を移られたこともあって、卒業以来まったくゼミの交流はありませんが…