【映画】ソウルフル・ワールド

ピクサーの長編アニメという位置づけにある本作は、ニューヨークの現実世界を描くリアルさとソウルの世界の「手抜き感」が醸し出すコントラストが馴染みにくい。ニューヨークのジャズミュージシャンを追う展開をもっと見たかったし、トロンボーン吹きのコニーら吹奏楽部員たちにも興味があった。スピンオフの短編でもよいので、ぜひ取り上げて欲しい。

さて、僕がこの映画から受け取ったメッセージは「ライフを受け継ぐ」こと、生命とか人生とか言ってしまうと重いのだが、もっと日常的な部分を中心にとらえたのでライフという単語がしっくりくる。人間は永遠の生命や若さを求めてしまうが、それと引き換えに誰かのライフが生まれないとしたらどうだろう。22番にライフを与えるために身を引くジョーの生き方は、実に自然な姿ではないだろうか。エンドゲームのサノスにも通じるのだが、宇宙、あるいは地球を中長期的視点でとらえて「人口を半分にしよう」とすることには意義がある。ただ、それは自分を犠牲にせずに他者を消すということである一方、ジョーの選択は自らを犠牲にしている。このあたりは、宗教観がバックグラウンドにあるようにも感じた。

明示的に示されているメッセージの「生きる目的」については、ちょっと消化不良のまま終わってしまった。最後にジョーにセカンドチャンスが与えられたことで、全体のストーリーがボケてしまったということなのかもしれない。