【全豪オープン】ナダル―チチパス

セカンドセットまでの展開を見る限り、「やはりラファは強い」という印象しかなかった。厳しいコースに打ち分ける上に、回転のつけ方も絶妙。ラインの外から巻いて戻ってくるようなショットを連発されては、チチパスとしても苦しかった。しかし、サードセットの中盤以降に流れが変わり始める。チチパスが強烈なサーブを軸に持ち返しつつあったところに、高く上がったボールをナダルがグラウンドスマッシュに行った際に、タイミングを外したように打ち損ねる。背中を痛めているという情報があるので、そのせいなのだろうか。ここから似たような場面が続き、タイブレークをチチパスが制した。

フォースセット以降はチチパスのサーブが冴えを増し、エラーも少なくなる。ナダルは相変わらず厳しいコースに打ち込んでいたものの、精度に陰りが見え始めていた。チチパスは4回戦をベレッティーニの棄権で勝ち上がっているため、年齢差とも相俟って体力的なアドバンテージもあったのかもしれない。イーブンで進みながら最後の最後、第9ゲームをブレークしてそのままセットを奪うとファイナルセットは明らかにチチパス優位に展開した。

なかなかブレークを許さなかったナダルだが、第11ゲームでミスが続き、ついにチチパスがサービング・フォー・ザ・マッチ。続く第12ゲームではナダルブレークポイントを握るものの、これをセーブしたチチパスが押し切った。この感動的な大逆転劇を無観客のロッド・レーバー・アリーナで行ったことは残念でならないが、間違いなく記憶に残る名勝負となった。残る大物はジョコビッチだけだが、試合巧者のメドベージェフと未知数のカラツェフもどう絡んでくるか、興味を惹かれるところだ。