【ダン・ブラウン】「Origin」を読了

Dan Brownの「Origin」をUS版で読了しました。宗教と科学の対立について大風呂敷を広げて展開するのですが、実はAIの物語なのかもしれません。Winstonと名付けられたアシスタントのようなコンシェルジュのようなAIをストーリーテラー的に登場させますが、謎解きが単調になることを避けるためか、途中で一時的に接続が遮断されてしまいます。最近の警察モノの米国ドラマでも、分析官がレギュラー出演するのが定番ですよね。展開の時間短縮にはなるものの、謎解きの醍醐味は薄れてしまうように思います。

また、このラングドン教授シリーズは、主人公が大学教授という捜査(=謎解き)において何の特権もない職業なので、本作では「スペイン皇太子の婚約者」という設定の女性が活躍します。これによる現実感の喪失は、結構大きいですね。全体を通しての印象は、「インフェルノ」より風呂敷を広げながら収束が期待外れというところでしょうか。

ネタバレにならない程度に中身の話を。僕はもともと無神論者に近いのですが、それは一神教の神を信じられないだけで「DNAこそが創造主」なのではないかという思いは持っていて、自分でもそのような内容の掌編連作を書いたことがあります。本作でも似たような観点で話が進む部分があり、これには共感できるだけに面白く読み進めました。

また、これも僕が以前から考えていた「すべての粒子の位置と運動の向きがわかれば、未来は予測できる」という、いわゆる「ラプラスの悪魔」のような展開も登場します。ただ、本作を読みながらこのテーマを反芻したとき、「粒子間で起きるすべての化学反応を法則化できていなければ、未来は予測できない」ことに気づいたのです。まさに最近、仕事の場で自分がした「どんなシステムでも、インプットがないものはアウトプットされない」という発言にも通じますね。