【長崎尚志】アルタンタハー 東方見聞録奇譚

20世紀少年」「PLUTO」に浦沢直樹のパートナーとして関わった長崎尚志の小説デビュー作として「アルタンタハー 東方見聞録奇譚」が出版されています。2つの作品「黄金の鶏」「黄金の鞍」による連作形式の伝奇ミステリです。20世紀少年の世界観が好きな僕は、書店でこの作品を発見した瞬間に購入を即断してしまったほど期待がありました。

前半の「黄金の鶏」は、奥州藤原氏の伝説や「チンギス・ハン=義経」説を巧みに使っていますが、最後はちょっとはぐらかされた印象です。東北を舞台としているところや大風呂敷を広げすぎて最後が小さくまとまってしまったところは、同じ伝奇小説作家の高橋克彦を思わせます。

後半の「黄金の鞍」は、コミックかテレビドラマのようにもったいつけた仕掛けと展開に、やや「やり過ぎ」感があります。長崎がプロレスや古書の知識をただひけらかしているかのような部分もあり、いかにも素人っぽい体裁には、やや期待を裏切られた感じが否めませんでした。ただ、終盤の展開はとてもテンポがあり、作者渾身の思いを感じます。

長崎氏の境遇と通じそうな設定に読めたので、気になっていろいろ調べたところ、やはり事実がベースになっているようです。ここでは詳しくは触れませんが、そんな余分な情報は知らない方が、純粋に作品を楽しめるのではないかと思います。

http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2158493