【宮部みゆき】ソロモンの偽証

宮部みゆきの久々の現代モノ「ソロモンの偽証」は全三冊の大作で、しかも現時点で入手可能な第1巻も第2巻も700ページを超えるボリュームです。第2巻の公式発売日は明日なのですが、狙い通り今日の仕事帰りにゲットできました。

第1巻の印象は、「かなり風呂敷を広げたな」というもの。中学生の転落死を端緒として、繰り返される謎の事件。それらを淡々と清潔感を持った展開で見せてくれます。宮部の作品は、どうしても「まじめな文学少女」の視点が強く、登場する不良や悪党に心理描写にもうひとつリアリティを感じられない傾向を感じてしまいます。本作は、とくに映画化を意識したような展開で、人物の相関が複雑に絡み合っているため、最初のうちは関係を把握するので精一杯ですね。

ただ、文章の仕掛けや伏線の張り方はさすが。700ページを一気に読ませるだけのストーリーを構築しているのは、宮部ならではです。学校の腐敗やマスコミの暴走、モンスターペアレンツなどの社会問題を扱いながらも、宮部ワールドらしい独特の「文学臭さ」を醸し出しているので、ファンなら十分満足できそうです。「構想15年、連載9年、作家生活25年の集大成」というだけのものはありますね。

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