【広島-大分】勝利は遠い

いい加減、ネガティブな記事を書き続けるのも良い気分はしないのだが、今の大分トリニータの試合を黙って見てはいられない。できていなければいけないことが、何もできていないからだ。オフ明けの練習を早期に開始しても、標榜している「気力」も「機力」もまったく見当たらない。今さら非公開練習をやっていることも、正直失笑ものだ。

何ができていないのか。まず、高さのあるFWにクロスを入れてもセカンドボールが取れない。これは、中盤の押上げができていない、すなわちアーリークロスを入れた時点で2列目とボランチがDFラインに近い位置に留まっているということだ。FWがワンタッチでシュートできればよいが、競られたときにはボールを確実に失っている。これが続くから、FWにとっては仲間がどこに顔を出してくれるかわからず、ボールを後ろに落とすことができない。

中盤の押上げができないとは、どういうことか。ボールをしっかりキープして時間を稼げないから、後ろから上がって行けないのだ。大分の選手がボールを長く持っているのは、「タメ」を作っているのではなく、ボールの出し所を探っているから。出し所がないということは、パスを受けられるところに選手がいないということだ。今の布陣ではロドリゴ・マンシャしかゲームを組み立てられないが、彼にしても足元は不安定でキープ力は不十分なのだ。

そして、もうひとつ。サイドから攻めようとしている意識は明らかに窺えるが、サイドでボールを持った時に3人も人をかけてしまっては、残りの広いピッチを7人のフィールドプレイヤーでカバーすることになり、手詰まりになる。サイドチェンジも一発ではできないし、パスを受けてから2~3タッチで出すようではチャンスが生まれるはずもない。

ついでに言えば、今の状況ではゲームの最初から点を取りに行くのではなく、15分はまずしっかり守るべきだ。開始2分で失点しては、現地やテレビで観戦しているサポーターのモチベーションを保つのは困難だ。時間帯ごとの攻め方や守り方、それもまたシステムだ。

以上のようなことが僕の言う「攻撃のシステム」であり、3-4-3か4-4-2かではないし、選手とポジションを決めてピッチに送り出すことでもない。攻撃のシステムは練習でしか作れないし、それは「選手を鍛える」こととは違う。これこそが監督の役割なのだ。

広島戦のスタメンは、おそらく「戦う意識を持った選手」を選んだのだろう。しかしながら、キム・ジョンヒョンのようにすぐに手を使って止めに行く選手や深谷のようにコンディションが万全でない選手は使うべきではない。前の2試合に比べればかなりよくなったものの、このままでは正直なところ勝利をつかむ日はシーズン終了まで来ないかもしれないとすら感じるのだ。