【人事の話】育休3年は誰のため?

突然安倍首相が表明した、育児休業期間の延長問題。現行1年6か月を3年に延ばすことで、女性労働力の戦力化を図ろうというものです。しかし、僕の周囲の育児ママ経験者やキャリア志向の女性には、これを快く思わない人も多く存在します。

まず第一に、3年ものブランクを経て元の職場、元の職種に戻ることはかなりのプレッシャーになるのではないかということ。1年6ヶ月でも「浦島太郎状態」に陥る人がいる中、3年のブランクは想像を絶する世界です。もともと日本の人事制度は終身雇用を前提に考えられているため、元の職場に戻ることが想定された育児休業に目が行きます。しかし、欧米型の出入り自由なカルチャーでは、いったん退職して子育てをした後、以前の職場に復帰するか新たなキャリアを歩むかという選択肢もあります。

また、ことさらに育児休業を制度化するということは、育児は女性のものという価値観に蝕まれているとも言えます。だいたい「女性労働力の戦力化」と言っている時点で、日本社会における「育児」の扱いの小ささを表していますね。

この問題の根源は「待機児童」の問題であり、それを解決することが最優先なはず。それを「育児休業の延長」で先延ばしにしようとする魂胆が見え透いてしまうことが、安倍首相の志の小ささではないでしょうか。就活3月解禁もそうですが、選挙権を持たない「企業」にお鉢を回すことは、政権政党の得意技。結果として企業の国際競争力を失っていることに、気づいてくれないと困ります。