【北欧ドラマ】疑わしき殺人者

Netflixで配信されているスウェーデンのドラマ「疑わしき殺人者」は、実際に起きた未解決事件をテーマにしている。スウェーデンのオロフ・パルメ首相が妻と映画館を出て歩いているところを銃殺され、その容疑者として浮上した男は二転三転する証言で捜査陣を翻弄する。当人は逮捕前に死亡してしまい、すべては闇の中なのだが、このドラマは明らかにそのスティグという男が犯人だという前提で作られている。

幼少期のトラウマから職場や友人からのいじめなども取り上げ、状況証拠としてはクロであるという展開なので、この作品だけを見ていたらスティグが犯人でないとはとても思えない。ただ、それを追うスウェーデン警察はいかにも手抜きというか、やる気もなく上の指示だけを見て動いているように見える。そもそも、首相が殺されたのに周囲にSPはおらず、駆け付けた警官も首相夫人に「お名前は?」と聞くくらいだ。

僕が興味を惹かれたのは、スティグのバックグラウンド。グラフィックデザインや設計の仕事をしているようなのだが、仕事がすべて手書きだと経営陣から非難されており、いかにも前時代的な人種に描かれている。部長でもないのに「広報部長」という名刺を作っていたり、自分からメディアに電話を掛けて取材を求めたりと、日本にも団塊の世代あたりで学生時代は闘争に明け暮れていたような人種に同類がいるように思う。ある意味、この作品は時代が変わったことをシニカルに描いているのかもしれない。