【天王洲銀河劇場】テイキングサイド

天王洲アイルの銀河劇場で、名指揮者フルトヴェングラーがナチと関わっていた疑惑を尋問する米軍将校を描いた芝居「テイキングサイド」を鑑賞しました。フルトヴェングラーを演じるのは平幹二朗。年齢を感じさせない迫力ある発声に裏打ちされた絶対的な存在感に圧倒されました。そして将校を演じる筧利夫は、ところどころ聞き難い台詞回しもありましたが、あれだけ出ずっぱりで長い台詞を演じ切った点は、評価に値すると思います。

この舞台は客電を点けたまま、5分近くベートーヴェン交響曲第5番「運命」の第4楽章が流れるところから始まります。僕としては、この間に心の準備をするべく音楽に浸りたいのですが、隣の席の人と会話を続けている人が多く、ちょっと閉口しました。そして劇中に、ナチの進軍風景をバックに流されるベートーヴェン交響曲第7番第2楽章には、胸の中に手を突っ込まれて揺さぶられるようなせつなさを感じます。間の取り方が絶妙なのは、演出を担当した行定勲の味でしょうね。

フルトヴェングラーと将校のどちらが正しいのか。というより、正しいことなんて存在するのか。そんなテーマを投げかけられる中、「芸術家は、堕落した聖職者だ」という台詞に妙に共感させられました。みだらな行為もするけど、聖職者なので信者の口に神を宿すこともできる。芸術は万能ではないけれど、人間にとっては意味のあるものだという力強いメッセージでした、

今日の公演は当日券狙いでした。劇場に1時間少し前に到着した時点では8人並んでいたので、半分あきらめて先に別件の用事を済ませ、10分前に訪れてみると結構よい席がゲットできました。

http://www.gingeki.jp/special/takingside/