【モーツァルト】アイネクライネナハトムジーク

英語で書けば "a small night music"という意味の非常に俗っぽいタイトルのこの曲は、高校時代に所属していたオーケストラで演奏したことがある。先日、池袋駅山手線ホームでたまたま東武東上線の発車サイン音が聞こえてきて、それがこのアイネクライネナハトムジークの第3楽章だと気づいて懐かしくなり、第1楽章から脳内再生が始まってしまった。

ファーストヴァイオリンの最初の音は、3つの音を同時に弾く和音だ。ヴァイオリンは弓で弦をこすることで音を出すのだが、弦はギターのように一直線に並んでいるのではなく、弧を描くように張られている。弓はたわむので、左上から右下に回すように押さえつけてボウイングをすることによって、3つの音を同時に出すことが可能なのだ。当然、力強い音にならざるを得ないし、インパクトのある演奏になる。弦楽器の特徴を理解した上でのオーケストレーションは、さすがにモーツァルトだ。

ただ、これは彼の定番でもあって、ドイツ舞曲にも最初に和音で強く弾かせるフレーズがある。モーツァルトは究極の「同じネタ使いまわし作曲家」なので、似たようなことは随所にあって、例えばセカンドヴァイオリンやビオラに刻ませるフレーズもお得意。僕は昔、モーツァルト風の交響曲第42番を書けると豪語していたが、それはモーツァルトらしいフレーズをつなぎ合わせれば、それっぽく仕上げられるという意味だった。