【プレシャス】そんな世界がそこにある

マンガ「ナニワ金融道」や「カバチタレ」を読むと「こんなドロドロした世界が、実はすぐそこにある」ことに気づかされます。自分が子どもの頃、これほどまでではないにせよ、切羽詰った生活をしている人たちは結構身近にいました。この作品「プレシャス」も、すぐそこにある貧困と「Wanna be(夢想するだけで行動しない)」の世界を描いています。

両親に虐待される17歳の少女。暴力と犯罪が渦巻く生活環境の中、通っているフリースクールの教師であるブルー・レインが精神的な拠り所となります。主人公プレシャスを演じるガボレイ・シディベと母親役のモニークの強烈な個性に対して、教師を演じるポーラ・パットンソーシャルワーカーを演じるマライア・キャリーの誠実で筋の通った役どころが映えていました。あそこまで「ヒール」に徹して、嫌な母親を演じ切ったモニークが昨年のアカデミー賞助演女優賞を獲ったのは納得できます。

とても気になるのが、終盤にプレシャスと母親がマライア演じるソーシャルワーカーとの面談に臨むシーン。カメラワークがなぜか微妙に揺れ、まるで素人のホームムービーのような映像になっている意味がよくわかりませんでした。作品としては、途中までは嫌になる一歩手前のどぎつさなのですが、その一線は越えないよう配慮されています。そして終盤にかけて、しっとりと暖かいものが心の中に少しずつ溜まっていく。そんな後味の良い作品です。

http://www.precious-movie.net/