【三菱一号館美術館】カンディンスキーと青騎士展

東京・丸の内の三菱一号館美術館は、明治を思わせるシックな建築も魅力です。一方で美術館向きのレイアウトではないことと、自動ドアがやけに多く、スタッフの多さと合わせた高コスト体質が気になるところではあります。11/23から開幕した「カンディンスキー青騎士展」は、来場者も多くなく、ゆったりと展示を楽しめました。

カンディンスキーと言えば幾何学のような抽象絵画が有名ですが、今回の展示は彼がその境地に至るまでの経緯が見て取れます。初期の作品はもっと「普通の」絵画ですが、キャンバスの地をそのまま残しながら色を塊で乗せてゆくという、まるで貼り絵のような手法が見られます。小さな「部分」の連続で全体を構成するという意味では、すでにあの幾何学絵画の原型がそこにあったと言えるでしょう。

40代の頃にカンディンスキーは、女性画家ミュンターと世界を放浪した後にドイツ南部のムルナウでの生活を始めますが、この街を描いた作品には印象的に「青」が使われています。色彩感覚としては過剰にも見える「青」の使い方は、この後に展開する抽象絵画での色使いにも通じるように思います。

そして何よりも興味深いのは、それまで写実的な作風だったミュンターと淡い色彩を好んだカンディンスキーの作品が、はっきりした色彩を使うという方向に収斂していくことです。言い換えれば、ふたりの作品が似通った方向に寄っていくのです。カンディンスキー絵画の完成に必要だった要素を、順に見せてくれるような、そんな展覧会でした。

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