【シャッターアイランド】委ねられた解釈

そのものズバリではないけれど、ネタバレに近い内容も書いてしまいますので、ご注意くださいね。この作品は、捜査官として孤島の収容所でもある病院に乗り込んだディカプリオ演じるテディを主体に展開します。しかしながら、事件の本質は「何が現実に起こったのか」が揺らいでいくところにあります。実際に起きたことは何で、そこに登場する人物たちは本当は何者なのか。それが問われているのです。

レオナルド・ディカプリオの演技は、一部のブログには酷評するものもあるけれど、僕の目には十分秀逸なものに見えました。そしていよいよ大詰めという場面で、揺らいでいく確信の下でとまどい主人公を見事に演じており、その展開の妙とともに時間を忘れるくらい引き込まれました。ところがそのすぐ後に、今しがたの迫真の演技は何だったのかというような台詞を発したあたりから、この映画の主題は大きく舵を切ります。

世の中にとっての「真実」は相対的なものでしかない。かつて吉本隆明が論じた「共同幻想」のように、法律や経済といった社会の仕組みも、正義も犯罪も、結局は物事をひとつの視点から見たに過ぎない。「真実」と気張ってみたところで、その程度のものなのだ。スコセッシ監督のそんなメッセージが、それまでの展開や演技を、自己否定してしまっているように思えるのです。見る者に解釈は委ねられるのですが、それがために映画としては後味の悪いものになってしまったのだと思います。

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