【ドラマ】またの名をグレイス

殺人事件を解明する物語だが、真実がどうだったのか最後まで見てもすっきりとしない。ある意味「パムの秘密」と似たようなものでもあり、どんな事件や裁判であっても「何が真実なのか」がそれほど明確ではなく、誰にとっての真実かという疑問を特殊な事例を用いて描いたということにすぎないのだと感じる。結果的に言えば、100%公平で公正な裁判なんて、存在しないのだ。

アボンリーへの道」でセーラを演じていたサラ・ポーリーが製作と脚本を務めていることも、本作に興味を持った一因。19世紀のカナダで、いわゆる「女中」が虐げられる生活を強いられ、南北戦争期の米国へ逃げるという展開には、この時代の価値観や歴史の片鱗が垣間見える。それはまさに、サラ・ポーリーが表現したかったことなのではないか。「アボンリー~」も決して楽な生活が描かれているわけではないが、本作に比べればどこか牧歌的な印象になってしまう。カナダといえば、米国より自由な雰囲気があるが、この時代はかなり生きにくい世の中だったようだ。

カナダ制作ということもあって、俳優陣は地味な印象。「チャック」のザッカリー・リヴァイは作品にアクセントを加えてはいるが、それほど長い時間の出演ではない。主人公グレイスを演じたサラ・ガドンの演技を、じっくりと楽しむのが正解だろう。過去の場面が挿入されるので、序盤はなかなか全容を理解できないかもしれないが、そこを抜ければ見応えのある展開が待っている。