【映画】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

映画に感動を求めなくてもよいし、リアリティがなくても問題ない。そもそも映画はどんなに史実に忠実に作ろうとしても結局はフィクションであって、エンターテイメントでしかないのだ。その意味で本作はいかにもクエンティン・タランティーノの風味で、痛快で楽しめる作品に仕上がっていた。

序盤は史実を追うかのような流れで伏線を張りまくり、中盤はちょっと駆け足にいろいろなものを詰め込んで味を煮詰め、そしてクライマックスの大活劇につなげる。マンソン・ファミリーによる襲撃の場面がいよいよやってくると、一気に音楽も展開もテンポも変わる。まるで「キル・ビル」を思わせるようなリアリティや納得感を無視した展開は、エンタメを追求しているからに他ならない。余計なことを考えず、どう撮ってどう編集したら観客、あるいは視聴者に爽快感がもたらされるかが大事なのだ。

このストーリーは、そのために巧妙に仕立てられたフィクションであり、言い換えれば嘘臭さ満載の作り話なのだ。「それで何が悪い。これで楽しめ」というタランティーノのウィンクが、画面の向こうに見えた気がした。ブラッド・ピットの演技が光り、タランティーノの求めるスパイスになっていた。ディカプリオとの共演は、話題作りには貢献しているが、それ以上ではなかったように感じた。