【ドラマ】エリック

息子が考案したキャラクターの「エリック」が現れ、その失踪した息子エドガーを共に捜索することになる主人公ヴィンセント。彼を演じるベネディクト・カンバーバッチの演技力が光る作品だった。

不動産王を親に持ち、放任された過去からパペット役者として身を立てる主人公は、自信過剰な皮肉屋だ。独善的な発言が多く、妻や息子との間にも不和が生じてしまう。そんな自分の正確と向き合うヴィンセントを、カンバーバッチは表情や行動で巧みに表現していた。多少なりとも僕自身の姿に重なるところを感じながら、物語の行方を追う展開となった。

表出する言動の裏に隠れて、十分に言語化されない個性が誰にでもある。そんな姿がエリックとして顕在化することによって、ヴィンセントは「自分」と向き合うことになり、父親としての思いにあらためて気づく。つまりエリックは、自分の中にいるモンスターなのだ。

本作の終盤に出てくる設定から、家庭とは物理的な家を指すのではなく、安心して帰れる場所のことなのだと思い知らされる。全編を通して登場するニューヨークのホームレスは、「家」そのものを失ったというより、「安心して帰れる場所」を失っている状態を指しているということだ。