【ローランギャロス】シフィオンテク―大坂なおみ

ファイナルセットでマッチポイントを握りながらの敗戦は大坂には残念だったとは思うが、苦手のクレーコートでの内容が格段に向上した上で女王シフィオンテクを追い詰めたと考えれば、素晴らしい内容だったことを称えるべきだろう。

試合開始からエンジンのかかりが遅いのは、大坂にとってはいつものこと。このファーストセットでもブレークダウンから追いついたが、タイブレークに入ると一気にミスが増えてしまった。ところが、セカンドセットはいきなりブレーク。要所で飛び出す大坂のダイナミックなウィナーに、シフィオンテクも警戒感を増してゆく。イガはサーブも打ちにくそうで、トスアップのやり直しも多く迷いが見て取れたが、それはやはりシフィオンテクにとって大坂の存在が大きいということなのだ。

シフィオンテクから見て7-6 1-6で迎えたファイナルセットでも、大坂がブレークを先行する。2つめのブレークを奪うチャンスも十分あったのだが、そこはシフィオンテクが食い下がる。そしてサービング・フォー・ザ・マッチで大坂はギアを上げる意識は窺えたが、なかなか上がり切らない。このセットの後半くらいから慎重になる場面も増えており、シフィオンテクに先に仕掛けられるようになっていた影響が、最後に響いてしまったようだ。このゲームでブレークバックを許すと、逆にギアを上げたシフィオンテクに押し切られてしまった。

それにしても素晴らしい内容の試合で、アザーコートが雨天中断の中で大会を盛り上げてくれた。オーディエンスが少なかったのは残念だし、この試合を見なかったチケットホルダーはもったいないとしか言い様がない。それほどに価値のある、充実した試合だった。芝のシーズンというより、その先のハードコートに向けて、なおみちゃんが準備してくれることを願っている。