【ドラマ】フォーティチュード/極寒の殺人鬼 シーズン1

ノルウェーの北方にあるスヴァールバル諸島を舞台に展開する英国ドラマだが、撮影はアイスランドで行われたらしい。スヴァールバル諸島は、メルカトル図法の地図ではやけに大きく描かれるが、実際は北海道より小さく、人口も3,000人に満たないほどの離島だ。ノルウェーから知事が任命されているものの、選挙権はなく、特殊な自治体系になっていることが、このドラマを見て初めて理解できた。

邦題では「極寒の殺人鬼」という副題がつけられているが、これはかえって作品の本質を見えにくくしている。単なる犯人捜しの物語ではなく、地球温暖化によって永久凍土が融けたことで生じる生態系の乱れを取り上げており、実はかなり骨太なドラマなのだ。

スヴァールバル諸島という限られた土地とリソースの中で、寒さだけでなくいろいろなものに抗いながら生活する住民たち。登場する男たちは、愛する女性のための正義を振りかざす。乱れた生態系の中で自らのDNAを残すことに躍起になっているように見える生物の本質をヒューマンな側面からあぶり出しているが、それは単に人類規模の話ではない。

環境に抗う過程で進化まで遂げてしまう「遺伝子」の逞しさは、空恐ろしくもある。原題の"Foritude"は架空の街の名前として扱われるが、本来の意味は「不屈の精神」ということなのだ。

俳優陣では、「ハリーポッター」シリーズで2代目としてダンブルドア役を担ったマイケル・ガンボンが、老写真家を味わい深く演じている。ブラックな要素を持ち合わせた人物なので、ダンブルドアとは表情も雰囲気も異なり、その演じ分けも見応え十分だ。