【ドラマ】THE KILLING~闇に眠る美少女~

デンマークの名作ドラマを米国でリメイクしたシリーズ。シーズン1~2はオリジナルのシーズン1を分割した形になっているので、ここまでうぃ全26話として捉えてもよさそうだ。シアトル市長選挙での候補者たちの暗躍と警察、闇組織の一翼を担う運送会社の社長一家らが複雑に絡みながら、複数のプロットで進行する。わかりにくさもあるが、二転三転する犯人捜しには見応えがあり、演技も映像も秀逸だ。

シアトル島嶼部の映像は、北欧のフィヨルドを思わせる。降り続く雨の描写によって陰鬱な雰囲気が全編を覆い、主人公サラ・リンデンが私生活を顧みずに捜査に邁進する様子は、コミカルにも描けただろうが、あえてシリアスに暗く、そして重く描いている。その陰鬱さは、シーズンを追うごとに軽減されてゆくのだが、その中でサラの相棒を担う刑事ホールダーの変化も興味深い。当初は「麻薬課時代に薬物依存に陥ったジャンキーの刑事」という風体だったところ、徐々に小綺麗に変化してゆく。特にシーズン3最終話とシーズン4の冒頭では、時間の経過がないはずの設定にも関わらず、さっぱり度合が格段に増しているのだ。これは、NetflixがAMCから引き取った影響だろう。

シーズン4だけ字幕版で見たが、これによってホールダーの同僚刑事であるレディックの吹き替えが「やり過ぎ」であることがわかった。抑揚をあまりに強く、しかもわざとらしくつける吹き替えは、明らかに原作のキャラクター設定をねじ曲げる結果になっている。また、シーズン1~2に市長候補として登場するビリー・キャンベルは「刑事カーディナル」では主人公を演じているが、その表情や台詞回しの演じ分けは見事としか言い様がない。とても同じ役者が演じているとは思えないほどだった。

10年ほど前の作品だが、携帯電話やGPS技術などを除けば、まったく違和感がない。それだけ人間心理の本質に迫った作品ということだろう。