【グラミー賞】第66回授賞式

グラミー賞授賞式は、誰が受賞するかよりもステージでのパフォーマンスを見たくて楽しみにしている。今年はビリー・ジョエルが30年ぶりにレコーディングした新曲を演奏した場面が、僕にとっては頂点だった。ベテラン陣では、ラスベガスのスフィアで演奏したU2や80歳の大御所ジョニ・ミッチェルも存在感を発揮していた。以前、当時87歳のオマーラのステージを見たことがあるが、ジョニとの共通点は声がちゃんと出ていなくても味のある思いを届けることができる年季の入った技だ。

若手では、何と言っても年間最優秀楽曲賞を獲得したビリー・アイリッシュ。映画「バービー」の世界観で登場し、ファンキーなリズムに染まっていたクリプト・ドット・コム・アリーナの雰囲気をシックに一変させた。印象的だったのは受賞スピーチの途中で、兄であり共同制作者とも言えるフィニアスが割って入り、感謝を述べ始めたこと。その後もしゃべろうとするフィニアスを、ビリーがブロックするような雰囲気も見せていたが、ふたりで「ビリー・アイリッシュ」というユニットを組んでいるようなものなのかもしれない。

マイリー・サイラスが鍛え抜かれた身体で色物風な動きを見せながら「Flowers」を歌い、「はじめてのグラミー」と興奮を見せる一方で、テイラー・スウィフトが「13回目のグラミー」と落ち着いて話しはじめ、後半は新譜の宣伝に費やしたこととのコントラストはおかしかった。また、政治的な言動が目立つジェイ・Zが、ドクター・ドレー・グローバル・インパクト賞のスピーチで延々しゃべりまくったことも、いかにも彼らしいエピソードだろう。

そしてエンディングでは、再びビリー・ジョエルが登場。僕にとっては、最初のビリー・ジョエル体験でシングル盤も持っていた「ガラスのニューヨーク(You May Be RIght)」を演奏してくれたことが一番のサプライズだった。これだからグラミー賞は、毎年2月最初のお楽しみなのだ。