【全豪オープン】シナー―メドベージェフ

シナーの2セッツダウンという展開ながら、サードセットには明らかに逆襲の予感が漂っていた。シナーが開き直ったのか、あるいはメドベージェフのショットに馴染んできたのか、アグレッシブな攻撃で押し始めていた。このセットを取り切ると、シナーは続くフォースセットも奪ってファイナルセットを迎えた。

その最初のゲームはシナーのサービス。30-30からの39を数える長い長いラリーを物にしたことで、流れは完全にシナーに来た。ここを落としていたら、いきなりのブレークポイントになってしまい、展開はかなり苦しくなったはずだ。長いラリーの中でも、シナーは常に仕掛け続けた。回転を変え、コースを変え、際どいところを狙う。ディフェンスが身上のメドベージェフも応戦するが、先にミスをしてしまうことが目立ち始めていた。

メドベージェフが長い腕を窮屈そうに振るシーンも多かったが、それはシナーがコースとしてボディを意識していた影響ではないだろうか。それだけ攻めようとすれば、当然にみすも増える。それはリスクを取った結果なので、仕方ないと割り切っていたはずだ。

終盤になるとメドベージェフのサーブが落ちてきた一方、シナーは200km/hを維持。ダブルファースト気味に攻める場面もあり、気持ちで後手に回ることはなかった。さすがにサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップでは表情に硬さも見られ、入れてくるセカンドサーブもあったが、何とか逃げ切って大逆転勝利を収めた。

日本勢ではジュニアの坂本怜、車いすの小田凱人と17歳の若手が栄光をつかんだが、シナーもまだ22歳。新たなヒーローの誕生は、世代交代が進みつつある今のテニス界にとって必要な要素だった。人柄も素晴らしいシナーは、これからのテニス界が向かう明るい未来を担っている。