【金沢―大分】攻めの遅さと選手起用

片野坂監督時代の大分もポゼッションサッカーを志向していたのは確かで、ボールを動かして相手の守備を剥がし、サイドを起点にして攻めるスタイルは現在にもつながっている。ただ、当時はショートカウンターというオプションも、しっかり持っていた。特徴的なのは田中達也だが、藤本憲明もその要素は見られた。それに対して今の大分は、マイボールにした後の切り替えが致命的に遅い。攻から守への切り替えは早いが、守から攻へはリスク回避でボールを下げるとことから始まる。

トップに配置された選手は守備に追われ、攻撃に転じた際にゴール前にいない。それは今節の長沢にも言え、結果的にゴール前には弓場や保田が詰める形になっている。決定力に欠ける伊佐がトップであれば、この戦術にも納得できる部分はあるのだが、長沢に伊佐と同じことを期待するのでは192cmの長身と決定力はまったく意味をなさない。

下平監督は選手の判断を重視しているようだが、スタートのメンバーを決めるのは監督であり、それは何らかの戦術に基づいた選考になっているはずだ。先日、ラグビーの中竹竜二さんのセミナーを受講する機会があり、彼もコーチングで選手の判断をサポートするタイプの指導者だが、「選手起用は監督の専権事項」と言い切っていた。その時点で間違っているとしたら、選手にはどうしようもないのではないか。

守備に関しても、センターバックの専門家がいなかった。そもそもペレイラボランチ、香川は左サイドバックが本職の選手。そんな彼らを上回るセンターバックがいないのなら、それは強化部の失敗だろう。デルランにしても安藤にしても期待通りの活躍とは言えず、失点の多さが得失点差マイナスという状況を生み出してしまった。金沢のカウンターを受けた際に、右サイドのカバーに香川がつき、そこから抜かれるシーンもあったが、守備の統率が取れていたとは思えないのだ。