【ラグビーワールドカップ】ウェールズ―アルゼンチン

日本戦で躍動したアルゼンチンのバックス陣の快走トライに期待していたウェールズとの準々決勝は、どれどころではない魅力満載のとんでもない試合になった。序盤は完全にウェールズがペースを握り、SOビガーが抜け出して決めたトライなどでリードを奪う。アルゼンチンはPGで小刻みに追い上げるという静かな展開で、劣勢に見えたのだが、後半8分のPGが激闘に変化する狼煙となった。

「この位置から狙うのか?」と感じざるを得なかったPGは55mという距離ながら、キッカーのボフェッリが右から巻いてポストの間を通過。これで、いったんアルゼンチンが逆転する。しかし、ウェールズは交代出場していたSHトモス・ウィリアムズが後半17分に、またしても中央から抜け出す形のトライで再逆転。日本代表は大外のウィングに頼りがちだが、中央をスカッと抜けるトライは実に美しい。ウェールズは全員が強くて走れる印象で、バランスのとれた非常に良いチームに感じた。

そして迎えた後半28分。アルゼンチンがラックを繰り返してFWでゴールラインに迫る。何度もライン寸前で押し戻されながらも、最後はPRスクラビがわずかな隙間にボールをねじ込んで、またしてもアルゼンチンがひっくり返した。勝負を決めたのは、後半37分のニコラス・サンチェス。僕が生観戦した2019年のワールドカップ・フランス戦でもPGを決めている彼が、ウェールズのパスをきれいにインターセプト。最後は右足でのコンバージョンを蹴りやすいようにポスト左に飛び込んだが、これは追走してきたWTBマテオ・カレーラスコーチングによるものに見えた。

17-29という結果だったが、最後の最後までスペクタクルな展開で見応えも十分。敗れたウェールズも実力的には十分優勝候補と呼べる内容だった。個人的にはフランスとアルゼンチンの決勝を見てみたいので、まずは明朝のフランスに期待しよう。