【ドラマ】正義の異邦人:ミープとアンネの日記

アンネ・フランクの家族たちが隠れて暮らしていたアムステルダムの生活を陰で支援し、ナチスに抵抗していたオーストリア出身の女性ミープを追う形で進められる作品で、実話がベースになっている。配偶者であるヤンは生活福祉局の職員で、公的機関としての情報や地位を活用しながら、ミープと一緒にユダヤ人を救い出し生活を支援していた。

一般的な「アンネの日記」にまつわる情報や、かつてアムステルダムで「アンネ・フランクの家」の訪れた経験からだけでは理解できていなかったことが、本作の中では多く語られていた。迫りくる空襲とナチスによる捜索の中、隠れて暮らすことのストレス。徐々に増えて8人という大人数で、あの狭い空間で暮らすだけでも辛いことは容易に想像できるが、価値観が微妙に異なる会話が近くで聞こえるストレスというものは、本作で非常にリアルに感じられた。連合国軍が迫っているというBBCのラジオ放送は、そもそも聞くだけで違法なのだが、その情報を過剰な期待感に置き換える人と、あくまで保守的に成功しなかったことを想定する人がいる。「電車で隣の人の会話が気になる」という程度のものとは、明らかに桁が違うのだ。

アンネや姉マルゴーについても必要以上に「良い子」には描かず、時に問題を起こし、ナチスに発見されかねないような愚挙を犯す。ミープやヤンも過剰な思いから、後で考えれば無理とわかるようなことを主張したりして、衝突してしまう。それでも揺るがない信念が、全編を通して伝わるメッセージであり、最終的には100歳まで生きて語り部としてナチスとの闘いを語りつづけたミープの生涯を実に象徴的に表現している作品に仕上がっている。ただし、重い内容なので、見る上ではそれなりの覚悟も必要だ。