【東野圭吾】人魚の眠る家

東野圭吾の新刊「人魚の眠る家」を読了しました。扱っているテーマは医療絡みの重いものなので、ちょっと身構えてしまうのですが、東野が語りたかったことは「自分の価値観からの解放」なのだと感じました。固定観念に凝り固まらずに視点を変えてみたら、もっと自由になれる。そんなメッセージではないかと思うのです。

主人公は、プールの事故で植物状態になってしまった娘を持つ母。そのキャラクター設定は非常に緻密にされていて、ちょっと嫌味な行動などが妙にリアルで迫力があります。ここでブレないのはさすが東野ですが、母性本能が強すぎる点にはちょっと辟易してしまいます。誰かを守ろうとしたときに、人は過剰な反応をしたり、異常な行動を取ってしまうものですからね…

ストーリーは東野らしく、奇をてらうこともなく、予定調和ともいえる結末が描かれます。ミステリというよりは純文学に近いような、そんな作品で、一気に読めてしまいました。